第五巻  社会史

  第一部  社会歴史

    文明社会システムの発展の歴史

世代
社会制度 原始共産制 奴隷制、封建制 資本主義 でんし共産制
時期 - 10000年前から 1750年から ?これから
経済の軸 狩猟、採取 農業 工業 高度情報産業(電子、遺伝子)
土台 - 土地 資本(金銭) 情報
階級 なし 領主(土地を持つ者)と
小作人(土地を持たない者)
資本家(資本を持つ者)と
労働者(資本を持たない者)
(過渡的には)情報を持つ者と情報を持たない者
(最終的には)人間と機械(人間同士には階級はなし)
制度を支える力 - 武力(土地を守る、拡張する力) 財力 知識(情報力)
通貨 - 物物交換、貴金属 紙幣 電子マネー、心(感謝、賞賛、愛)
社会の単位 家族 国家(民族) 地球
注)第3世代では、工業製品がなくなるという意味では有りません。第2世代
でも農業が残ったように第3世代でも工業も農業も残ります。ただ経済活動の
主流でなくなるという意味です。

参考:アルビン・トフラー「第三の波」「パワーシフト」(中公文庫)



でんし共産制社会の「でんし」とは、今後社会を動かす大きな要因となる電子
と遺伝子(DNA)を掛けています。また、原始共産制社会の「原始」とも掛
けています。

「共産主義」ではなく「共産制」と名付けたのは、この社会がある思想を基に
成立するものではなく、必然的にそうなると思われるからです。「資本主義」
も同様にそのような思想があるからではなく、必然的にそうなっているのです。

「否定の否定」の法則によれば、元々、階級の無い社会が、生産効率が高まる
過程において、一時的に、階級社会になり、最終的に、生産効率が完全に高ま
った状態では、再び階級の無い社会になると予測されています。

これを例を用いて説明すると次のようになります。

10人が食べていくのに10人が働かなければならない場合、社会に階級は生
じません。これが原始共産制社会です。

道具や技術の進歩で、生産性が向上した場合、10人が食べていくのに、8人
働けば良いことになります。この場合、残り2人が支配階級になります。
これが、奴隷制、封建制などの階級社会です。

もっと生産性が向上した場合、10人が食べていくのに、2人が働けば良いこ
とになります。この場合、残り8人が支配階級になるという単純なことは起こ
りません。2人は支配階級ですが、残り6人は失業者になるのです。

この失業者がどうなるかというと、別の種類の新しい仕事をすることになりま
す。農業の生産性の向上で失業した人たちは、産業革命によって、工業の仕事
をするようになりました。工業の生産性の向上で失業した人たちは、情報革命
によって、情報やサービスの仕事をするようになって行くでしょう。

質と量の転換法則によれば、このように、生産性の向上という量の変化が
社会構造の変化という質の変化を起こします。この質の変化は急激なので、そ
の変化のさなかにある人は、うろたえます。今、この変化が起こっているので
す。

さらに生産性が向上して、10人が食べていくのに、1人も働かなくても良く
なるとどうなるでしょうか。社会に階級がなくなるのです。これが最終的な姿
です。みんな何もしなくて、怠惰な生活を送るのかというと、そうではありま
せん。これは後で詳しく述べますが、人間の経済活動は生命の維持と種の保存
という、肉体的側面を満たすためだけにあるものではありません。精神的な側
面もあるのです。最近、ボランティア、福祉、NPOの話題が良く取り上げら
れるようになり、いままであまり関心がもたれなかった分野が注目されてきて
います。これらはあきらかに物質的なものを求めるいままでの方向から、精神
的のものを求める方向に、社会の構造が移行していることのあらわれです。
このような社会は物の豊かさを求めてきた資本主義社会と違って、心の豊かさ
を求めていく社会になるでしょう。人の労働の対象が物から心に変わるのです。



「工業的社会主義社会」と「でんし共産制社会」の違い

1990年代の次々と崩壊していったソビエト的共産主義社会を「でんし共産
制社会」と区別して「工業的社会主義社会」ということにします。
ソビエトは共産制社会を目指していましたが、結局達成できなかったため、あ
えて社会主義と名付けました。

社会主義は「働きに応じて得る」社会であり、生産性が高まっていない過渡的
状態であると言われています。たとえば、10人が食べるのに8人働く必要が
あるなら、10人が0.8人分ずつ平等に働くという感じです。(資本主義社
会では、8人が働いて、2人が働かずに得る。)一方、共産主義は「必要に応
じて得る」社会であり、生産性が完全に高まった状態のこといいます。つまり、
10人が働かずに得るという、最終的な状態のことをいいます。

工業的社会主義社会とは、第2世代の工業に立脚した社会(物、金銭を重要視
する社会)で、物的、金銭的資本を社会的に共有する社会です。社会的資本は
全て国家が管理します。
でんし共産制社会とは、第3世代の情報に立脚した社会(知識、心を重要視す
る社会)で、知的、情的資本を社会的に共有する社会です。この社会的資本は
国家が管理しません。
ちなみに、原始共産制社会は個人的資本も社会的資本も存在しないために、階
級がない社会をいいます。

ソビエトと東欧の工業的社会主義社会の崩壊によって、共産主義に資本主義が
勝ったと言われていますが、これは違います。資本主義社会では自由経済をと
っていたため、いち早く情報化社会に移行できたのですが、工業的社会主義社
会は計画経済をとっていたため、工業に固執し情報化に遅れたのです。資本主
義社会も情報の力によって崩れ始めており、いずれは、でんし共産制社会に移
行する運命にあるのです。

でんし共産制社会では、知的、情的資本を社会的に共有するといいましたが、
なぜ、知的、情的資本は独占できないのでしょうか。パーソナルコンピュータ
のOSの訴訟事件がよい例です。マイクロソフトがウィンドウズ95を発売し
たとき、これがアップルのマッキントッシュに似ていたため、アップルがマイ
クロソフトに対して、訴訟を起こしました。しかし、ゼロックスがアップルに
対して、訴訟を起こしたため、アップルは訴訟を取り下げました。実は、マッ
キントッシュはゼロックスのアルトを手本に作られていたのです。このように
まるままコピーでなければ、アイデアを他社が採用しても、禁止するのは難し
いのです。知的所有権で縛れるのは、まるままコピーだけなのです。知的資本
は独占が難しいのです。知識を持っているのは従業員ですが、彼らにお金をつ
ぎ込んで教育しても、他社に引き抜かれてしまう恐れがあるのです。